2010年07月05日

それでも日本人は「戦争」を選んだ

d007c855.jpg 恥ずかしながら「読書は通勤電車の中」だけだったもので、リタイアしてからほどんど本を読んでいません。針仕事の面白さに読書を忘れた3ヶ月でしたが、雑誌「Femme Politique」の書評でそれでも日本人は「戦争」を選んだを知りました。

 この本は東大文学部教授加藤陽子さん横浜栄光学園の中学生、高校生に冬休みの5日間を利用して行った講義の集大成です。
 
 筆者の専門は近現代史、19世紀末から20世紀半ば、日清戦争から太平洋戦争終結あたり、日本にとっても西欧にとっても戦争につぐ戦争、帝国主義の時代です。
 
 この本も「戦争」を中心に進んでいくのですが、出来事をなぞって教えるのではなく、要所要所で質問を投げかけて興味を盛り上げ、若者の好奇心を刺激しながら「出来事」の裏にひそむ本質に気づかせます。

 一例として911後のアメリカの戦争と日清戦争に眼を向けさせます。両者の共通点を「相手が悪いことをしたのだから武力行使は当然と武力行使を悪い人を取り締まる警察のような感覚だった」と断じています。1930年代の日本と現代のアメリカという全く異なるはずの国家に共通するものが見えてくる。「歴史の面白さの真髄はこのような比較と相対比にある」と説いています。

 第二次世界大戦についても通説の見逃しがちな詳細な具体的知識を与え、その深部に潜むものを取り出して示す鮮やかさ。徹底的な調査と綿密なデータとに基づき、
有無を言わせぬ説得力で私たちの固定観念を打ち破ります。

 東大教授が何故中高校生なのか。。。。について筆者は、東大では、文学部の三、四年生と大学院生に教えているが

 ・それでは遅い
 ・理系学生にも、法律、経済を学ぶ学生にも学んでほしい

 と書いています。
 
 そういう思いから中高生への講義になったそうですが、講義の集大成でできたこの本は私たち中高年にも読み応えのある面白い本になっています。



kumie62 at 21:21│Comments(4)TrackBack(0)clip!読書 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by kaoru   2010年07月06日 00:58
私も戦争犠牲者の1人です。戦後は終わっていない、今だ連綿と続き、その遺族の辛さは灰になるまで消える事はない、若い世代に継承すべきは必定、
歳月の風化に、決してすべきではない、個人的な意見としては、1国の責任者が尊い御霊に敬虔な参拝を詣でるのは、当然だと思う。
このご本、拝読します。いい本のご紹介、ありがとうございます。
2. Posted by kumie62   2010年07月06日 02:00
> 私も戦争犠牲者の1人です。戦後は終わっていない、今だ連綿と続き、その遺族の辛さは灰になるまで消える事はない、若い世代に継承すべきは必定、
> 歳月の風化に、決してすべきではない、個人的な意見としては、1国の責任者が尊い御霊に敬虔な参拝を詣でるのは、当然だと思う。
> このご本、拝読します。いい本のご紹介、ありがとうございます。

私の身内にも戦死者がいますが、靖国神宮は好きになれません。
「国のために死んだら神になる」
と若者たちを戦地に送り込むためにマインドコントロールする舞台装置だったのですから。

あそこの鳩が白鳩だけだったのを見たときも、
「日本人の血は尊い。異分子は排除しよう。」
という思想の象徴のように思えてぞっとしました。


http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:KzL0KN6xEZUJ:www.yasukuni.or.jp/precincts/dovehouse.html+%E7%99%BD%E9%B3%A9%E9%B3%A9%E8%88%8E&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

自分が行ったときは普通の鳩だったという方もいましたから、
「気を抜けばすぐに混血してしまう。白鳩だけを維持するのはたいへんな苦労。」
ということでしょう。
3. Posted by ゆきばば   2010年07月06日 09:52
教科書に載ってない真実をこれから育って行く子供達に
伝えなければいけない事ですね。
日本の歴史の過去に正面から眼を向けて受け止めていかなければ、
子供達は、沖縄の問題とか理解できないのではないでしょうか。

昨年、白洲次郎がクローズアップされ本を買いあさって読みました。
ご紹介頂いた本の早速読んでみたいと思います。
4. Posted by kumie62   2010年07月09日 18:50
ゆきばばさんコメントありがとうございます。
今、山東省の威海というところから帰ってきました。

この本は、目をそむけたくなるような書き方ではなく、過去に出版された本、公になっている記録、新しい発見などの資料、データを元に事実を浮き彫りにしています。

中国側のすごい人材も取り上げています。
いつか、中国語訳の本が出版されることを期待したい!

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔